日本共産党流山市議団
活動紹介
存続の声広がり市民運動 「おふろの日」廃止を市が撤回

つくばエクスプレス沿線整備及び新川耕地特別委員会

視察報告書

小田桐たかし


■日時:8月3日  午前:我孫子市、午後:柏市かしわで

■課題:本市の農業振興にどう活かすのか、本市が進めている直売所設置に向けた検討課題(土地・建物、運営主体、農産物の品揃え、後継者不足、農家経営の改善)をより明確にする。

■ 我孫子市の農業及びあびこ農産物直売所アンテナショップ

●我孫子市農業の現状から、本市農政と方向性と考える

 我孫子市農業の特徴として、(1)近年30年間で専業農家は4割減、兼業農家は半減。一方で専業:兼業の割合はほとんど変化がない。(2)耕作面積93000アール中、田77%・畑21%は、30年前との比較で畑の減少が顕著。一方で、農業祖生産額では野菜が61%を占める。以上のことから、地域特性=利根川、手賀沼周辺をいかし、稲作農業を軸足に、畑等もプラスした農家経営で、営農を図っていると思われる。

 そのためには、国政では米国FTA等からの撤退など市場任せの米価、米価の買い叩きからの国策転換が欠かせない。同時に、市独自の政策、我孫子米のブランド化、学校給食や我孫子市内の飲食店の“一店一品運動”などの取組みに結び付ける取り組む必要があると思われる。

 本市農政との関係では、我孫子市と比較して、経営耕地面積は42%、稲作は4分の1程度。しかし、農業生産額27万6千万円は我孫子市とほぼ同額(98%)、1農家当たりの生産農業所得(156万6千円)は1.1倍、耕作地10アール当たりの生産農業所得(20万4千円)は2.3倍となっている。これは、(1)米の買い叩きや『水より安いお米』と指摘されるほど、稲作農業の収入が少ないことを示す。(2)本市各農家経営者の努力、農家婦人を中心とした朝市によるものが大きい。ただし、農家従事者の平均年齢59.2歳は東葛地域でトップであることは、将来性に大きな不安となっている。

 以上のことから、本市農業の発展に向け、(1)野菜の高品質化や多品目生産、(2)減農薬のいっそうの強化、(3)無農薬への転換促進、(4)市内事業者と連携したブランド化、(5)加工品への応用を促進することを提案する。また、(7)後継者対策、例えば、農家技術取得のための生計費援助や流山高校園芸科卒業生の農家従事援助策、農家里親制度(取り組みたい農産物の技術習得のために、現役農家での従事・技術指導援助を制度化すること)などの取組みが必要と考える。
 さらに、本市でも我孫子市でも耕作放棄地の拡大は全国規模で急速に広がっている。東葛地域全体を見渡し、各地域の農家による多品目生産と合わせ、各地域特性を生かした農産物の生産を考慮し、東葛地域全体で生産・購入・消費運動も検討する時期にきているのではないか。

●直売所アンテナショップから、課題を整理する

※あびこ農産物直売所アンテナショップの概要

・設置目的:消費者動向・農産物の売れ筋の把握、出荷調性・栽培計画の試行・検証、経営のあり方等情報収集。
・敷地面積約4,400平方メートル、建物面積約195平方メートル(売場97平方メートル、バックヤード26平方メートル)
・建築費:約3922万円(市単、起債できず・国県補助無)、土地代:1.74億円(債務負担行為)
・特筆すべき経緯:民設民営→公設民営((財)我孫子市あゆみの郷・都市建設公社)で立ち上げたものの。現在、収支バランスが悪いこともあり、公営も含めた検討が必要とのこと。
・経営者の思い:バックヤードが手狭、コンビニのように消費者動向・農産物の売れ筋をもっと把握する必要がある。
・行政の支援策:学校給食への納品(11/19校)。しかし、民業圧迫・納品量・体制から難しい面があるとのことである。

 以上のことから、行政依存の直売所経営の難しさ、目標設定の厳しさがどこまで共有できているのかは大きな要因と思われる。


■ 柏市 農産物直売所かしわで課題を整理する

※かしわでの概要

・運営理念:モノの売買の場にとどまらず、農業の情報発信基地と、生産者と消費者の交流。消費者の利益を第一にする。「地産地消」の促進(品揃えは国産・県産のみ。品質向上・確認のための自己分析の経費300万円も(会社負担200万、農家100万円)実施し、品揃えで外国産を排除し、消費者との信頼を深める)と合わせ、都市の中で共生する農業。農業所得の向上。

・敷地面積約7,300平方メートル、建物面積約438平方メートル(以外に駐車場120台分)
・総事業費:約1億5千万円(土地:調性区域・借地)、
・特筆すべき経緯:10年前の個人的集まりから、スタート。中国からの農産物輸入品の価格破壊を知り、国内農家の方向性を模索。土地や融資など苦労を重ねながらも、発起人15名が中心(一人当たり1700万円もの借金)となって、立ち上げる。年間売上目標を54億円とし、開業後、今年6月で250万人の来客数(春日部方面(週1回)、伊豆方面(月1回ベース)もいる)を有する。

●本市直売所設置における課題整理

 【1】出荷農家、品揃えをどう確保するか:あびこアンテナショップの出荷者は組合員55人、随時参加22人とのこと。漬物の参加者からは「売場が手狭」と離していたが、お客10人で一杯という感じ、ゆっくり品揃えの比較・生産者の確認が難しい。一方、かしわでは広大場売場面積+生産組合員221人(登録240人)、随時参加130〜150人(柏市内約70人)を有していることから、開放感とともに、多品目・異なる生産者の農産物をしっかり見て選択できることは消費者としてうれしい。
 また、かしわでが実施している研修制度(生産物研修(いかに高品質を確保するかなど)、従業員研修(ホテル研修やツアーde農家:農家の苦労も知る。農産物の特性を知る)、農業体験の充実は、今後の直売所経営成功に向けた試金石として、位置づける必要があると考える。

 【2】売上の安定:あびこアンテナショップにおける一人当たりの売上数は、H19年期1062円(うち市内農産物702円)に対し、H21年期1166円(725円)と若干上昇しているが、参加農家を引き止めるほどの魅力があるかどうか、“生業”として農家経営を応援できるかは疑問である。実際、参加農家は他店舗にも品物を出荷し、「どこでどんなものが売れるのか」「これからどこに出荷を多くするのか」と真剣に定めている。
 一方かしわでは、一人当たりの売上額が2千円前後となっている。また、各農産物に個別リピーターがついているケースも多く、農家と消費者の交流、高品質化による売上増と農家のやりがいにもつながっている。
 かしわでは、1日当りの売上情報発信4回。あびこアンテナショップではもっと精度の良い搬入・販売・品揃えができる機械の設置の要望が聞かれた。この点を踏まえ、農家に売上をできる限りダイレクトに、新鮮品目の購入機会の向上・生産意欲向上につながる方向で検討が必要である。
 ただかしわででは、(1)参加農家の確保、(2)販売価格の設定に苦労していた。本市でも細心の注意(農家と消費者の信頼構築、消費者の望む農産物の生産、季節や地域特性、農家の努力に対する消費者の理解向上等)とあわせ、安易な割引路線に走らず、良い物をそれなりの値段での販売が必要だと考える。

 【3】土地の確保、直売所の経営主体:あびこアンテナショップでは紆余曲折視ながら土地の確保・建物建設は市が全額負担し、経営にも公のあり方が問われている。拍手では「経営破たんが即農家も含めた自分たちの借金につながるので、必死だった。行政や農協が用意したものではうまくいかない」「借金返済も含めれば十分な売上確保は難しい」と話していたことは大いに参考になった。かしわでで品質自己分析費を農家に自己負担をお願いしたように、農家一人一人がどんな形であれ、主体的に参加するかどうか、行政・農協がどこまで汗を流し、将来見通しをもてるかどうかがネックではないか。「one for all,all or one」(一人はみんなのために、みんなは一人のために)と学生時代に学んだが、本市直売所の設置に欠かせない精神的支柱として、積極的な政策提案とともに見届けたい。

 【4】直売所設置は政策の一つ、本市農政の拡大・強化こそ:あびこアンテナショップもかしわでも、市内全域の農政をどうするのかーという方向性を太い柱に位置づけた取組みでなければ、何のための、誰のための、何をするための直売所かどうかが曖昧になってしまう恐れがある。また、取り組みが市域全体、商工農連携につなげ、国力アップ(後継者対策や耕作放棄地の減少なども含め)や市産業への波及につながりきれない。
 近隣他市の取組みから、主体とあわせて、農家や消費者の要求をより深め、直売所の設置理念・運営に徹底的にいかすこと、後継者対策や耕作放棄地対策、減農薬から一歩進めた無農薬化など農政の方向性、農商工連携の強化に活かすための視野・見聞を広げる体制・予算化など脳性の拡大・強化こそ必要だと考える。
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