5月17日〜18日、東京・日野市でNPO法人多摩住民自治研究所が主催する「第1回議員の学校」が開催され、北は岩手県から南は鳥取県まで全国から約70名の地方議員が参加しました。
流山市からは、日本共産党市議団の高野とも団長といぬい紳一郎議員が参加し、地方自治の原則や新しい時代に求められる議会のあり方について学びました。
最初に、第1回目の記念講演として、宮本憲一元大阪市立大学学長が、「維持可能な社会と地方自治ー世界大不況と地球環境の危機ー」について講演をおこないました。
宮本先生は、2007年年8月のサブプライムローンの破たん以来の世界大不況について、「1929年世界大恐慌に匹敵する大不況が始まった。レーガン政権以来約30年続いた新自由主義の破たんがハッキリしてきた」と指摘。そして、新自由主義は、国公有財産を民有化し、市場の障害となる規制を緩和し、「小さな政府」論で福祉国家をやめて、聖域だったところを縮減していく。効率化を追求する、資本主義の持っている不平等を公共部門で所得の再配分する累進税制という資本主義の安定装置をなくすものだった。所得税の最高税率が75%から35%に下げられ、累進税制から平均税制にフラット化がすすんだ。今日の財政危機は、高額所得者や大企業への減税をすすめてきたことが原因であると述べました。
そして、大不況の原因は何かといえば、第1に、パックスアメリカーナといわれてきたアメリカ一極支配の終わり。第2に、金融制度の欠陥、第3に、新自由主義の思想と政策、第4に多国籍企業の利益を確保するための完全自由貿易体制であるWTO体制の問題であるとして、新自由主義の思想と政策をやめ、分権型福祉社会の展望を示すことが重要と主張しました。
日本がとりわけ不況が厳しいことについて、「アメリカの消費低下の影響を最もうけたのは日本であり、輸出依存型の国がもっとも影響をうけた。日本は短い期間に新自由主義政策を「構造改革」としてやっていた。そこに、世界的な大不況が重なったところに、日本の深刻度の重さがある」と述べました。
最後に、今30年ぶりに転換期が始まろうとして、維持可能な社会へ向かっていく可能性がある。維持可能な社会とは、第1に平和を維持する、特に核戦争を防止する。第2に、活況と資源を保全・再生し、地球は人間を含む生態系の環境として維持・改善する。第3に、絶対的貧困を克服して、社会経済的な不公正を除去する。第4に、民主主義を国際国内的に確立する。第5に、基本的人権を思想・表現の自由を達成し、多様な文化の共生を進める。という5つの課題が総合的に実現する社会であり、これをどのように実現していくか。足元から維持可能な社会をつくっていくことが現実的で、ヨーロッパでは維持可能な社会を地域からつくっていく運動が広がっている。日本でも、革新自治体をつくっていくことで、地域から分権型福祉社会を展望していけるのではないかと提案しました。
宮本先生の講演は、歴史の流れの中で、現在の世界不況を解明するもので、とてもスケールの大きい話でした。また、行き詰った現代社会を乗り越える上での地方自治の役割を認識することができました。
その後、第1講義では、多摩住民自治研究所の池上洋通氏が「地方自治の原則と地方議会の役割」について講義を行いました。ここでは、第1部地方自治の原則として、憲法と地方自治と地方自治の意義とその原則の展開を、第2部地方分権改革と地方議会、第3部地方議会の役割と議会改革について、講義が行われました。
実践報告として、東京・小金井市の議会改革について、元小金井市議会事務局長の芳須浩彰氏が報告しました。
第2講義では、金沢大学の武田公子教授が「地方財政の改革課題ーこれまでとこれからー」と題して講義を行いました。自らの委員として参加している第29次地方制度調査会での議論の状況について、スライドを使いながらのお話でした。第29次地方制度調査会では財政問題が取り上げられていないのが不満だ。と述べ、財源保障機能と財政調整機能という、地方交付税の本来的機能の回復が必要との指摘は、納得できるものでした。
そして、地域経済社会の戦略的・政策責任主体としての基礎自治体構築にむけて、地域における「貧困とのとの闘い」、ローカルな雇用創出の可能性と地域内循環の創出が必要と主張しました。
第3講義では、横浜市立大の廣田全男教授が、「ヨーロッパ地方自治憲章と海外の地方自治」について講義をおこないました。