日本共産党流山市議団
活動紹介
都市建設常任委員会行政視察 報告書
小田桐たかし
 【視察日程・場所】

10月29日 新潟県長岡市及び川口町―中越地震からの復旧・復興の取組みについて
   30日 群馬県長野原町―八ッ場ダム建設事業について


■中越地震からの復旧・復興の取組みについて

 H16年10月発生した中越地震から4年が経過する中で、各関係自治体の問題意識を共有し、本市の防災対策にいかすとともに、国の取り組みの問題点・課題を自治体レベルの共同で改善する必要性を感じた。
 長岡市と川口町では、財政規模や被害家屋の件数が異なっているが、復旧作業の取り組みで共通し、本市で取り入れるべき課題があったと思われる。

 第一に、日頃の訓練を中途半端にしないことである。川口町では、策定が義務化されていた震災対策計画すらなく、役場訓練もなかったとお聞きした。長岡市でも通信基金の使用方法が分からず混乱したとのことであったが、同年夏の水害の教訓・経験が活きたとのことで、日頃の訓練、特に機器操作や担当者任せにしない主体的取り組みの重要性を再認識し、中途半端な取り組みが障害になることを防ぐ必要がある。

 第二に、地域コミュニティーの形成・成熟である。川口町では、緊急避難食の確保を地域住民が自らの農地や家から拠出しあい、助け合った。その後も、ワークショップや委員会を立ち上げ、地域毎の復興に力をつくされている。コミュニティー作りは地域住民の主体的参加が欠かせないが、行政も一緒に知恵を出し、汗を流しながらコミュニティー形成を図ることは、災害時に強い力を発揮している。地域コミュニティーの組織率が川口町より低い本市にとっては、「行政のできる範囲に限界がある」とする前に、日頃から、地域住民と行政がどう関わりあうのか、信頼関係の構築に努めることも必要である。この取り組みは、災害時だけにとどまらず、復興に向けた共通認識(取り組み)を発展させる力にもなると考える。

 第三に、画一的な対策ではなく、地域独自の個性・特性・迅速性を生かした支援策である。地域毎による移転(コミュニティーを重視した復興)や、壊れた家屋等の撤去費用に対する公費支出、災害廃棄物処理(震災後1ヶ月は、通常の5倍規模)、応急仮設住宅の工夫(豪雪対策、玄関前の風除けと玄関が向き合う形での設置、自治会館やデイサービス機能を備えた施設も同時設置)、情報発信(広報の日刊化・ボランティア向けニュース・被災者支援制度一覧を掲載した市政だより号外)など様々な工夫がされていた。これは、阪神淡路大地震以降、震災復旧の課題が一つ一つ解決されていることを感じる。本市でも準備しておく問題など数多く学ぶ必要がある。
 特に、すぐに検討する必要がある課題は、(1)災害場所の実態把握や被害状況、支援体制の内容など双方向型の移動式防災無線を民生委員や自治会長、行政連絡員、消防団員、議員に配布し、活用を図ること。(2)災害時の代表電話は、警備員室にかかるのではなく、災害担当窓口に直通されること。(3)災害担当部は総務部に戻し、指示命令系統・人事配置の効率化を図ることである。
 また、国の対策として、本市のような市街化の拡大により、農地や空き地の減少が急激に進んでいる。都市の中の農地や空き地をどう保全するのかー地権者とともに行政も地域も一緒になって考える必要がある。税法など解決するべき課題は多いが、国有地を活用した防災公園の設置を国が進んで実施すべきである。また、被災者生活再建支援法や激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律(激甚災害)について、画一的な基準を押し付けないで、実態に即して改正すべきである。そのほか個別的なものだが、応急仮設住宅では、風呂の追い炊きができない、部屋入口がアコーディオンカーテンであること、押入れはカーテンにされていること、真夏は蒸し風呂になること、薄い壁でトラブルが多いことなどもあげられた。

 第四に、個別具体的な支援体制の確立や個別ボランティの組織・把握を高めることである。両自治体とも、震災後、想定される個別具体的対策の実施・確認で大きな混乱を生じている。炊き出し・救援物資の配布届け・し尿処理・廃棄物・メンタル面での支援・避難場所の確保・エコノミー症候群対策・風呂・保育(遊び含)・学習(学校への送迎)・医療・家屋内外の片付け・取り付け・建て付けなど、個別具体的な支援(市内で用意できるもの、市外の救援に依存するもの、民間の力を生かすもの)やボランティアの配置など、初動の混乱防止と、被災者が早期に見通しが持てるよう、建築・保育・整体師など業態の専門性を生かしたボランティアや、バイク愛好家などのバイク隊ボランティなどとともに、個別具体的支援毎の実施の流れ、支持命令系統、財政支援のあり方などを確認しておくことが本市に必要である。

 第五に、支援物資の受け取りについてである。両自治体とも、個別の支援物資は途中から受け取りを拒否した。物資の仕分け・保管場所・利用不可のものと様々な問題が生じていたとのことである。「一番はお金」と話されていたことが特徴的であったが、財政基盤が充分でない自治体の支援を、大きな災害時にはやはり国が思い切った力(財政投入)を発揮すべきである。

 以上、大きく5点について指摘したが、今回の視察を通じて、暮らしの安定化、生業の再構築、地域コミュニティーの復活を復旧・復興の重点に据える必要性を改めて実感した。

 私自身、阪神淡路大震災と中越地震の災害ボランティアに参加した経験から、両自治体の担当者が「復旧にメドがついた。これからは復興」と説明されていたことに違和感を覚えた。(1)住宅再建では5年間は公営住宅の家賃も、住宅再建のための借入金利子も安く設定されているが、その後は支払いが急激に引き上げられることで、深刻な生活苦が広がる(自己破産者の増大)恐れがあること。(2)山古志村など中山間地では62%しか戻っていない実態を考えれば、被災集落の再生を急がなければ限界集落となりかねないこと。これは神戸市長田区でも起きているように、都市部でも起きる可能性が大きい。(3)両自治体とも住民の具体的な話ができなかったように、土木工事などの復旧は目にしやすくとも、住民の生活の復旧は見えにくくなること。実際、山古志村では、住民主体に直売所・食堂経営を始めたが、これは新潟県の『地域特性化・交流支援』事業で、震災復旧・復興の取り組みとならず、災害担当の把握が充分ではない。(4)生業の再構築が十分されていないと思われる。長岡市では、駅前商店街がシャッター通りとなり、農業では「集落営農や器具の共同購入、営農組合の立ち上げが進んだ」と説明されたが、個人的原資の拠出を補うだけの支援はない。また、山古志で100頭の闘牛の運搬にはヘリ1台100万円/時もかかるが、これも多くが個人負担している。

 以上のように、自治体は、地域住民の困難を解決するために、自治体独自の努力とともに、国に意見を上げることができる。今回、市民レベルでの復旧に欠かせない個別具体的な支援策も含め、積極的に体験談を語り、課題を吸い上げ、今後も、意見を上げてほしい。これは、現在、災害復旧・復興で苦しんでいる地域住民に役立つだけでなく、将来災害被害で悩む国民や自治体への救いとなると考える。

■八ッ場ダム事業について

 八ッ場ダムは、1952年の現地調査以来、続けられている治水対策を主な目的とした事業で、完成H27(2015)年度を目標に、利水対策として本市に配水される計画である。

 現地を視察し、一番実感したことは、誰も責任を取らない体制の中で、多額の税金(直接事業費:当初2100億円→現在4600億円、関連事業費:1250億円)を投入し、素晴らしい環境(景観)が壊されてしまっていいのかという点である。

 S22年のカスリーン台風を理由としているが、専門家からは疑問や異論が相次ぎ、現在、裁判(八ッ場ダム建設への公金支出差し止め訴訟)が実施されていることからも、今後、治水対策に対する科学的・客観的な検証を行うことが求められている。ただし、現時点で指摘できるのは、川辺側ダム同様に、56年前に計画された事業が、いまだに漫然と続けられ、事業費が膨らむことはあっても、“時のアセス”、つまり時代に即した計画の縮小が行われていないことは大いに問題を感じる。

 利水面でも千葉県や本市にとって、本当に八ッ場ダム建設にどうしても参加しなければならないのか検証が必要である。千葉県でいえば、H32(2020)年度の需要水量は383万トンに対し、確保している水量は425万トンと、現在でも42トンも余剰があるにもかかわらず、八ッ場ダムから23万トンを購入するとし、県費全体で459億円(建設事業費:403億円、関連事業費:34億円(水源地域対策特別措置法分)、22億円(水源地対策基金分)も投入する。しかし、節水意識や節約の結果、一人1日最大給水量はH6(1994)年度403リットル、H14(2002)年度376リットル、H18(06)358リットルと減少傾向に加え、将来人口の頭打ち・減少傾向へ移る中で、改めた検証とともに、税金の使い方を根本的に見直す必要があると考える(資料提供:千葉県自治体問題研究所・水道事業研究会)。

 また、本市との関係ではどうか。本市では、TX沿線巨大開発に伴い、大幅な人口増加を見込み、その給水を八ッ場ダムに依存することになっている。しかし、北千葉水道事業団からの受水と自己水源(地下水)でまかなわれている本市の水道事業から、実態に基づき計画変更の時期にきていると思われる。

 理由の第一に、本市水道事業における八ッ場ダムの依存はわずかであること。北千葉水道事業団におけるH22年度計画によれば、1日最大給水量6.184?/秒を基本に、一日最大取水量6.647?/秒に対し、八ッ場ダムからは0.35?/秒(5.27%)しか配水しない。このうち本市への配水量はわずか9%と大きな影響を与えるものではない。また、自己水源の確保を増やせば、八ッ場ダムへの必要性はないと思われる。

 第二に、実態が反映されていない。八ッ場ダムの完成(H27年度)から、わずか5年後、H32年度が本市人口のピーク(189,000人)であることなどがあげられる。本市第6次拡張計画は、H18年度に変更され、将来人口〔H22(2010)年度17,5517人→16,4700人〕や一人1日最大給水量〔H22年度395リットル/人・日→364リットル/人・日〕など下方修正され、1日最大給水量も6.184→6.076?/秒と引下げられている。

 第三に、不動産投機の崩壊やサブプライムローンの破たんが深刻化する中で、バブル当時に立てた新線沿線開発が計画通りに住宅や人口が張付くことは考えられない。第四に、水道料金の値上げにつながる可能性が大きい。市民の多くは、現在の本市の水道料金が「高い」と感じているにもかかわらず、現計画が将来的な料金値上げにつながること。

 よって今視察により、本市の行政運営や各種施策にいかすべき点を以下に上げる。

 第一に、長期に及ぶ大型公共事業は、特に”特のアセス”を導入し、市民レベルで、必要性や採算性をふまえた事業変更が行う仕組みを構築すること。

 第二に、継続行政を否定するものではないが、税金を使う以上、事業計画を進めてきた責任を曖昧にしないこと。
 第三に、環境問題が重要な課題になっている時代だからこそ、自然環境を壊す公共事業から、地域に残る自然環境を保存し、地域資源としていかすまちづくりに転換することである。

 第四に、八ッ場ダムの現地では、ダム本体工事と事業計画内に含まれた住民の生活の維持・生業の安定が同時並行で取り組まれているため、事業の遅延による、地区外への移転者が続出(79世帯中58世帯)し、地域コミュニティの分断、生活の不安定化が起きている。本市沿線開発では地区内住民の暮らしの安定・生業の安定を最優先した計画変更とすることである。換地処分が伴う区画整理事業では、地区住民の生活や土地の権利関係が複雑に絡み合うため、全国的にも規模縮小した例はわずかである。しかし、社会経済上でも本市財政でも身の丈にあった内容にするためには、規模縮小は避けては通れないとわが党は考える。そのためにも、施行者や公的機関の保有地を活用した優先移転、家屋保障の手当も含め地権者の生業・暮らしを優先した取り組みの必要性を改めて強く実感した。

 第五に、学校の移転補償費の算出は妥当性が担保されてしかるべきである。八ッ場ダム建設に伴い移転した中学校(1年27人、2年生32人、3年生50人=合計109人)の移転補償費は19億円。小学校(合計26人)の移転補償費は12億円で、地元町の持ち出しは一切無い。一方、本市小山小学校(304人(08.10.1現在))の移転費は13億円で、用地費用も含めれば50億円(20年間の運営費含め)を超える負担をしており、本市の姿勢が問われるべきである。

 [追記]

 日本共産党では、この間、行政視察における夕食のあり方や日当について改善を求めてきた。他党・他会派の理解も得られ、夕食時の飲酒は私費による取り扱い改善され、今都市建設委員会では、私から「視察の夕食が、一般的にも高額な食事が設定されており、いまの苦しい市民感覚からかい離がある」と指摘し、夕食は各自でとることになった。私以外の議員は、事務局が設定した場所での食事にしたが、私は地元の魚と野菜を使った定食1,110円で済ませられた。地域を歩けば市民の苦しい生活実態に触れることが多くある中で、自らの取り組みで、経費(税金)を節減できることへ、一歩つながったと実感した。

 引き続き、日当(議員報酬を貰いながら、宿泊を有する視察に行くと出る手当)の廃止などに取り組んでいきたい。
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